マネジメントの基本「PDCA」
マネジメントのみならず、新入社員からベテラン社員まで、
ぜひとも身につけておきたいのが「PDCA」サイクルです。
ご存知の方も多いでしょう。
今日は、この「PDCA」をおさらいしてみましょう。
■ PDCAとは?仕事を、
Plan(計画)⇒ Do(実行)⇒ Check(検証・評価)⇒ Action(改善・工夫)
の順番で進め、
仕事の効率と質を向上させること。
マネジメントサイクル、デミングサイクルとも呼ばれています。
米国の統計学者「ウィリアム・エドワーズ・デミング」が提唱したとされ、
今や経営や仕事をマネジメントする基本となっています。
仕事を着実に進めるためには、明確な目標と周到な計画が必要です。
それを十分に理解した上で、計画にそって実行していくのが効率よく仕事を進める要です。
さらに大切なのは、仕事をやりっぱなしにせず、成果や進め方を検証することです。
うまくいかなかったにしろ、うまくいったにしろ、
計画ややり方について改善や修正を施し、
同じような失敗をしないために、あるいはもっとうまく進めるために、
得られた教訓を次の計画に反映させていきます。
このサイクルは、一度回して終わりではなく、
何回も繰り返す中で継続的に仕事が改善されていきます。
ことに昨今の経営環境の変化が激しい時代では、
日々ふりかえることと改善、修正することが必須といえます。
■ PDCAサイクルの目的 社員には、与えられた仕事を、指示に基づいて期限までに、
ミスなく遅滞なく確実にやり遂げ、目標を達成することが求められています。
更に、目の前にある仕事を指示された通り黙々とこなすだけではなく、
チャレンジ精神をもって仕事のやり方を自ら考えだし、
作業効率の向上や作業の質、結果の質を高め、より高い目標達成を目指すという、
自発的、主体的な働き方(自立型社員)も求められています。
これらを実現するためには、
Plan(計画)⇒ Do(実行)⇒ Check(検証・評価)⇒ Action(改善・工夫)
のサイクルを回しつづけることが必要です。
■ PDCAの実践ポイント1.Plan(計画)のポイント@まずは、仕事の目的や方針、目標を明らかにするとともに、
QCDSM(品質、コスト、納期、安全、士気)を把握する。
A現状を正確にとらえる。
目標達成に必要な5W2H(誰が、何を、いつまでに、どこまで、どうやって、
どれくらいなど)を確認して、わかりやすい計画を立てる。(見える化)
B数値目標を立て、なぜ、何のためにその目標を立てるのかを考え、
検討を重ねながら、できるだけ具体的かつ現実的なアクションプランを考える。
C最後に、この計画で目標が確実に達成できるかを再検討する。
2.Do(実行)のポイント@計画にそって着実に実行しながら、計画の進捗度合を測る。
A単にプランを実行するだけではなく、この方法で本当にいいのか、
ほかに有効な方法はないのかを考えながら進めることも大切。
B期限内に完了するよう効果的、効率的な業務遂行を意識する。
ムリ・ムダ・ムラの排除
C途中でミスやトラブル、不具合が発生したら、すぐに関係先に報告し対策を打つ。
バッドニュースファースト ⇒ 計画の修正・協力の依頼。
Dチーム内での協力や声のかけ合いなど、コミュニケーションも必須。
わからないことは、躊躇せず積極的に「質問」しよう。
*「ホウ レン ソウ」+5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の視点
3.Check(検証・評価)のポイント@成果の達成度ややり方を検証、評価し、成功や失敗の原因を分析する。
目標が達成できたか、計画通り仕事が進んだかなど、問題や不具合を検証する。
A計画通りに実行できた場合はその成功要因を、計画通りに行かなかったので
あればどこに原因があったのかを分析して洗い出し、検証を行う。
*三現主義「現地・現物・現実(現認)」で評価。
B目標、計画、作業の進め方、協力などが効果的、効率的であったか、検証する。
「5S、ムリ・ムダ・ムリ排除」の視点で検証する。
C目標が達成できなかった場合は、不具合を発生させている原因を追求して、
真因を把握する。(なぜ、なぜを5回)
*仕事の途中でcheckすることも必要 ⇒ 計画・目標の変更あり
4.Action(改善)のポイント@「Check」で洗い出した成功要因や失敗要因について、どうすればできるようになるか、
どうすればうまくいくのかなど「改善策」を考える。
Aうまくいった点は、更にうまくいく方法を考える。
B目標や計画、進め方などをどうしたらもっとレベルアップできるかを考える。
C場合によっては「やめる」(PDCAサイクルを止める)という判断を行うこともある。
D改善点は、できるかぎり文書化して共有する。(標準化)
そして・・(P)計画を立て直す。
このようにしてPDCAサイクルを回し続けていきます。
■ PDCAがうまくいかない原因と対応法PDCAがうまくいかず失敗してしまう原因は、
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の各ステップにあります。
途中で壁にぶつかったり、頓挫しそうになったりしたら、
以下の項目をチェックしてみてください。
1.Plan(計画)・目標や計画が曖昧。
・設定した数値目標が高すぎて計画倒れになっている。
・目標に至るまでのアクションプランが描けていない。
(ヌケモレがある。あるいは具体的なアクションをするには具体性が欠けている)
・目標や計画がメンバーで共有されていない。
目標を設定したら、実現可能かどうかを自分なりに検証したうえで、
抜け漏れのないよう計画を立てることが大事。
2.Do(実行)・「絵にかいた餅」状態になっていて、実行されない。
・計画がきちんと立てられていない。
・実行イメージができていない。
・おおよそできたところで実行や止めてしまう。
・途中で検証せず最後まで進めてしまう。
いわゆる「見切り発車で始めてしまう」「ただがむしゃらに頑張る」というケース。
Planの段階でしっかりアクションプランを立てられていれば防げる失敗。
まずはしっかり計画を立て、それに沿って行動することを意識する。
3.Check(評価)・やりっぱなしで、検証も評価もしない。
・目標や計画が曖昧で、検証できない。
・曖昧な検証で主観的な評価が多い。
・原因追求が責任追及になってしまう。
評価をおざなりにするケースが多い。
また、早く成果を出したいあまりに、「おおよそこれで大丈夫だろう」と
抽象的で主観的な評価を下すケースも少なくない。
評価があいまいでは改善もできない。
事前に立てた数値目標を基準に、定量的な観点で客観的に評価することを意識する。
4.Action(改善)・改善する内容が明確になっていない。
・失敗や反省が次に活かされない。
・改善策が間違っている。
・やり方を改善せずにガンバリズムに陥った。
・上っ面の改善策でお茶を濁した。
的確な評価を行い、改善点が明確になったとしても、
実際に改善が成されなければ意味はない。
改善につながる方法を複数考えて実行し、トライアンドエラーを繰り返すことが重要。
■ PDCAのメリット・目標ややるべきことが明確になる
・行動に集中しやすくなる
・業務の一連の流れをシンプルに4段階に分けてあるので実行に移しやすい。
個人でもPDCAに沿って行動すれば、業務改善を実現し成果を上げることができる。
・PDCAを通して現状の課題が明らかになる。
・PDCAを回す中で、必然的に不足している点や課題点が明らかになり、
打つべき策が見えてくる。
・PDCAを通して、計画を立ててから実行することの大切さ、
やりっぱなしではなくしっかり振り返り検証することの大切さ、
そしてそれをもとに改善することの重要性が理解できる。
■ PDCAのデメリットPDCAには、「ゴール」という視点が欠けている。
・ゴールを意識することで、事前準備に時間を使うようになり、
変化にも臨機応変に対応できるようになる。
・計画ではなく、本来のゴールに対して振り返りを行い、次回以降に活かす、
といった好循環を生み出すことができる。
・ゴールを設定せずに見切り発車的に業務に着手してしまうことで、
たくさんの手戻りを発生させ、同じ失敗を繰り返すという悪循環につながる。
そこで、より有効なのは
G(Goal)-PDCAだという考えもある。
■ おわりにイロイロ効果のあるPDCAサイクルですが、
今や「時代遅れ」とか「古い」ともいわれるようになってきました。
<理由>
1.「Plan(計画)」の部分に時間をかけすぎ、スピード感に欠ける。IT技術の発展に伴い、スピード感を持って効率的に業務をこなしていかないと、
競合他社に遅れをとってしまう時代になりました。
ニーズや価値観が目まぐるしく変化していく現代において、
計画に時間をかけてしまうと実行しようとしたときには既に流行が変わっている、
なんてことも起こってしまうのです。
2.経営環境の変化が激しく、計画通りにはいかない。IT技術の発展によって世の中がVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の状態に
なっていると言われています。
このような状況の中で、まず計画を立てる必要のあるPDCAサイクルは
計画の段階から勧めなくなる可能性が高く、
時間やコストがかかると言われるようになってしまいました。
確かに、PDCAは、計画に時間をかけすぎるきらいがあり、
時間をかけている間に、市場、業界はどんどん変化していく、
といったこともありそうです。
また、今や計画通りに進まないのが経営。
社内のみならず、国内、海外、自然災害など、
いつなんどき計画変更をせざるを得ない状況が増えています。
とはいえ、基本的なマネジメントサイクル「PDCA」は、押さえておくほうがいいでしょう。
その上で、外部環境、内部環境の変化にもスピード感を持って対応できる仕組みづくり、
組織作りも大切ですね。