安心して発言できる職場ですか?
私の担当するコミュニケーション研修では、
職場の状態についてセルフチェックをする時間を設けています。
そこで出てくる意見には
「困っている人に声をかける人は少ない」
「人を傷つけるような発言をする人がいる」
「ミーティングでは意見を言わない人が多い」
「悪口や陰口が多い」
など、ネガティブなものもあります。
これらはまさに、最近注目されている「心理的安全性」に関するテーマでもあります。
■ 心理的安全性(psychological safety)」とはハーバード大学で組織行動学を研究するエドモンドソンが
1999年に提唱した心理学用語。
組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと。
あるいは、
「対人関係においてリスクのある行動をしても
このチームは安全な場所であるという信念が、チームメンバーによって共有された状態」
とも定義されている。
なお、エドモンドソン氏は、心理的安全性の重要性に気づいたときの経験を、
スピーチフォーラム「TED」でスピーチしています。
つまり、
組織の心理的安全性が高い状況であれば、
どのような質問やアイディアを提案しても受け止めてもらえると信じることができ、
思いついたアイディアや考えを率直に発言することができる、
といえます。
コロナ禍や不景気、物価高、治安不安など不安要素が多い昨今、
職場の心理的安全性は大切ですね。
■ 心理的安全性がもたらすメリット@ パフォーマンスが向上し、業績や成果につながる
心理的安全性が高いと、安心して仕事に集中できる環境になる。
その結果、個人のパフォーマンスが向上し、仕事の効率や業績向上につながる。
積極的に議論し、納得した上で目標に向かうので、目標達成のスピードも速くなる。
➁ コミュニケーションが活発になる
不安を感じて発言を控えることがなくなるため、
メンバー間のコミュニケーションが活発になる。
コミュニケーションが円滑になると、メンバー同士での情報交換がスムーズになり、
失敗や不正などのネガティブな情報も集まりやすくなるので、
早い段階で気づいて早急な対応ができる。
また、どのような意見でも受け入れてもらえるという安心感があれば、
創造的なアイディアや既存の考えを覆すような発想が出やすくなる。
結果として現状を良くするための提言が積極的に行われるため、
イノベーションが促進される。
➂ エンゲージメントが高まる
心理的に安全な職場では自分の能力を生かせるため組織への愛着心が深まり、
エンゲージメント(企業・職場と従業員の関係性、自社と顧客との関係性を表す)
が高まる。
離職率も低くなるため、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できる。
■ 心理的安全性を損なう4つ要因と特徴行動
エドモンドソン先生は、
スピーチフォーラム「TED」で「心理的安全性を損なう要因と特徴行動を紹介しました。
心理的安全性が低くなる原因として、4つの不安があります。
@ 無知だと思われる不安(Ignorant)
質問や確認をしたくても「こんなことも知らないのかと思われないか」と不安になり、
気になることがあっても質問しづらくなる。
➁ 無能だと思われる不安(Incompetent)
ミスや失敗した時に「仕事ができないと思われるのでは」と不安になり、
自分の失敗や弱点を認めなかったり、ミスを報告しなかったりするようになる。
➂ 邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)
自分が発言することで「話の邪魔をしていると思われないか」不安になり、
提案や発言をしなくなっていく。
C ネガティブだと思われる不安(Negative)
改善を提案したくても「他の人の意見を批判していると否定的に捉えられるのでは」
と不安になり、現状の批判をしなくなったり、意見があっても言わなくなる。
・・・キーワードは「不安」
確かに、自分の発言、アイデアについて否定される不安があると
何も言えなくなってしまいますね。
■ チームの心理的安全性を高める5つの方法@ 心理的安全性を
体験できる仕組みをつくる
部署を超えてメンバーが集まり、自由にディスカッションできる勉強会などを開催して、
安心して雑談や対話を繰り返す機会を作る。
また1on1ミーティングで上司と腹を割って話す機会を作るなどして、
発言することへの不安を徐々に取り除いていく。
➁ 特定の人に
偏らず発言できるようにする
会議やミーティングなどで、メンバー全員が発言できているかどうかをチェックし、
立場の弱い人や新しく入った人などへ意識的に発言を促す。
➂ 何のために発言するのか
共通した価値観を持つ
たとえば「言いたいことを言うのは顧客のため」、
「良い商品を作るため」などの価値観を共有しておくことで、一体感が生まれ
意見が言いやすくなる。
C
アサーティブ・コミュニケーションを心掛ける
アサーティブ・コミュニケーションとは、
相手を尊重しながら対等に自分の要望や感情を伝えるコミュニケーション法。
アサーティブなコミュニケーション技術を学ぶことにより、
要求や気持ちを適切に表現できるようになるため、心理的安全性を高めるのに役立つ。
D 飲み会や食事会を実施する
職場以外の場所で交流することによってリラックスした状態になり、
心理的安全性が高まりやすくなる。
他の方法を実践する前に、まずは飲み会や食事会の時間で
心理的安全性を高める方法を試してみるのも良い。
2〜3人などの少人数での食事でも実践の価値はある。
■ 心理的安全性が高いとは「なれ合い」ではない心理的安全性の話をすると、よく出てくる質問があります。
「心理的安全性によって責任を持たずに発言したり、
言いたい放題になったりするのではないか」
「なれ合い、仲良しクラブになってしまうのではないか」
職場の心理的安全性を高める大きな目的は、
「職場での問題解決やイノベーション促進ため」。
これらを意識して進めたいですね。
■ おわりにあなたの職場は、あるいは会社は「心理的安全性」は、高い方ですか?
リーダーのあなたなら、
建設的な目的のために「心理的安全性」を高めることを意識してみませんか?