心理的安全性 D 「阻害要因」
これまで、イロイロとしつこく、「心理的安全性」について考えてきました。
もうしばらく、がまんしてくださいね。
今日は「阻害要因」です。
■ 心理的安全性を損ねる4つの阻害要因とは?心理的安全性を高める取り組みをはじめても、
さまざまな阻害要因が立ちはだかることがあります。
そのため、具体的な取り組みを始める前にこれらの阻害要因を理解しておくことで、
阻害要因に対して適切に対処でき、健全な組織づくりにつながるでしょう。
(心理的安全性が低い職場で生まれる4つの不安)
@「無知だ」と思われることへの不安
「こんなことを聞くと、無知だと思われないだろうか」という不安があると、質問することをためらってしまいます。そのため業務を明確に理解しないまま進行してしまうと、結果としてミスが増えることにつながります。上司やメンバーに相談できなくなり、業務への意欲やチーム内のコミュニケーションも低下します。
A「無能だ」と思われることへの不安
失敗したときに「こんな仕事もできないのか」と思われるのではないか、という不安があると、ミスを隠したり、他者に責任転嫁したりするようになります。ミスを恐れるあまり、新しい事に挑戦しにくくなり、イノベーション創出の障壁になります。
B「邪魔だ」と思われることへの不安
「議論の邪魔になるかもしれない」という不安は、積極的な発言を困難にします。自由な意見交換の場が失われ、アイデアや提案が出せなくなります。その結果お互いの考えが理解できず、新たな発想の創出も期待できないチームになります。
C「ネガティブだ」と思われることへの不安
ネガティブだと思われることへの不安とは、反対意見を言うと「あの人はいつも人の意見を否定する」「ケチをつけている」と思われるのではないかと考えることです。他人と異なる意見を持っている場合、発言できなくなり、アイデアをブラッシュアップする機会が失われます。
@無知だと思われる不安「無知だと思われたくない」という不安は、多くの人が抱える心理的障壁です。
この不安が強いと、質問や意見を出す際に「知らないと思われたくない」という気持ちから
自分の知識や理解に疑問を持つことをためらい、新たな情報を共有しにくくなります。
たとえば、新入社員が「初歩的なことを聞いて馬鹿にされるのではないか」と恐れて
質問を控えてしまうケースがこれに当たります。
もちろん、新入社員に限らずベテラン社員であっても同様で、
たとえば新しいプロジェクトで分からない点がある時に
「こんなことも分からないのかと思われたくない」などという理由で
質問を避けてしまうケースが挙げられるでしょう。
このように、無知だと思われる不安が強いと、分からないことがあっても質問できず、
結果として学習の機会を逃してしまいます。
また、結果としてプロジェクトの進行を妨げることもあるでしょう。
そしてこの不安を解消するために、
「質問は学ぶ意欲の表れである」という価値観を組織全体に浸透させることが大切です。
まずはリーダーが積極的に「質問は大歓迎」という姿勢を示すことで、
この不安を和らげることができるでしょう。
A無能だと思われる不安「無能だと思われたくない」という不安は、新しいことへの挑戦を躊躇させる要因となります。
この不安が強いと、失敗を恐れるあまり、安全な選択をとる傾向が強くなるでしょう。
たとえば、社員が「新しいプロジェクトで失敗したら評価が下がるのでは」と考え、
挑戦を避けてしまうケースがこれに当たります。
ほかにも、重要な役回りを打診されたときに
「上手くできなかったらがっかりされるのでは」と考え、
打診を断るケースなども考えられるでしょう。
このように、無能だと思われる不安が強いと、失敗することへの恐怖から挑戦の機会を逃し、
結果として組織の成長機会を失うことにつながってしまうのです。
そしてこの不安を解消するために、
まずは「失敗は成長の糧である」「失敗は悪いことではない」という考え方を
組織文化として定着させることが重要です。
B邪魔をする人だと思われる不安「邪魔をする人だと思われたくない」という不安は、
チーム内でのコミュニケーションを抑制する要因となります。
この不安が強いと、質問や意見を控えてしまい、
重要な情報共有や議論の機会を逃す可能性が高くなります。
たとえば、会議中に疑問点があっても「質問すると時間を無駄にしてしまうのでは」と考え、
発言を控えてしまうケースがこれに当たります。
また、上司や同僚が忙しそうにしているときに「迷惑になるのでは」と思い、
協力を求められなかったり、重要な報告や相談を後回しにしてしまったりすることもあるでしょう。
このように、邪魔をする人だと思われる不安が強いと、
必要なコミュニケーションが阻害され、
チームの生産性や問題解決能力の低下を招いてしまうのです。
この不安を解消するためには、リーダーやメンバーが助け合いを促す環境を作ることが重要です。
たとえ小さなことでも「いつでもサポートし合える」文化を醸成することで、
心理的安全性を高めることができるでしょう。
ほかにも、定期的な1on1ミーティングを設けるなど、
コミュニケーションの機会を意図的に作るような方法も効果的です。
Cネガティブだと思われる不安「ネガティブだと思われたくない」という不安は、
問題点や懸念事項の指摘を躊躇させる要因となります。
この不安が強いと、重要な課題を見過ごしたり、
過度に楽観的な判断をしたりする傾向が強くなってしまうでしょう。
たとえば、プロジェクトの進行に問題を感じていても
「指摘するとネガティブな人間だと思われるのでは」と考え、
黙っていてしまうケースがこれに当たります。
また、上司の提案に対して懸念がある場合でも
「反対意見を言うと協調性がないと思われるのでは」と考え、
同意してしまうこともあるでしょう。
このように、ネガティブだと思われる不安が強いと、
重要な問題点が見過ごされ、
組織が適切なリスク管理や意思決定を行えなくなる可能性があります。
そしてこの不安を解消するためには、
「建設的な批判は組織の成長に不可欠である」という認識を共有し、
問題提起を積極的に評価する文化をつくることが重要です。
また、意図的に反対意見を出しやすい環境を作ることも効果的でしょう。
■おわりにどこの職場でも、またどんなビジネスパーソンでも、このような不安を持つことはあるでしょう。
たとえ不安を感じたとしても、
それを乗り越え、勇気をもって発言できるような安全性のある職場にできるといいですね。