ビジネスシーンでのアサーション事例
先日は、爽やかな自己主張「アサーション」について考えてみました。
ビジネスシーンでの人間関係から発生するストレスを軽減するためにも、
穏やかに自己主張する「アサーション」を身につけたいものです。
そこで、今日は、ビジネスシーンでよくある事例から、
アサーションの方法を考えてみましょう。
・・・ちょいと、長くなりますがご容赦ください。
■事例1
「取引先A社から無理なスケジュールの案件を頼まれたとき」1.客観的に事実を伝える 「大変申し訳ありません。現在、仕事が非常に立て込んでいまして、
御社のスケジュールでのご要望に応えることはできそうにもありません」
2.自分の意見や感情を伝える 「私としては、御社にはいつもお世話になっており、この案件も非常に興味がありますので
お引き受けしたいと考えます。
が、このまま引き受けてしまうと、どうしても期限に間に合いそうもなく、
結果的に御社にご迷惑をかけてしまうことになります」
3.相手の求めているものを解決策として提案するA案「そこで、期限を〇〇まで延ばしていただければ、お受けできると思います」
B案「そこで、私の担当を□□のみとし、あとの○○は△△氏に委任するなど
分割して担当するなら、期限までに間に合うと思われます」
4.提案への選択をうながす 「いかがでしょうか?
私の今のご提案でよろしければ、お受けすることができ、
ご満足いただける内容になると思いますが」
■事例2
「矢継ぎ早に指示を出してくる課長に対して、ガマンしないで今の状況を素直に伝える」1.客観的に事実を伝える
「大変申し訳ありません。今、先日ご指示されたA案件とB案件で手一杯です。
特にA件は、部長肝入りの企画ということで重点的に取り組んでいるところなので、
今回のご指示を受けることはできそうにもありません」
2.自分の意見や感情を伝える
「私としては、お引き受けしたいのは、やまやまですが、
このまま引き受けてしまうと、期限に間に合いそうもなく、
結果的にご迷惑をかけてしまいます」
3.相手の求めているものを解決策として提案する
A案「そこで、明日中なら、お受けできると思います」
B案「そこで、私の担当を□□のみとし、あとは△△氏に委任するなど
分割して担当するということなら、期限までに間に合うと思われます」
4.提案への選択をうながす
「いかがでしょうか? 私のご提案でご了承いただけるならお受けすることができますが」
■ 事例3
「ミスの多い部下A」1.客観的に事実を伝える
「いつもがんばってくれてありがとう。助かっているよ。
ところで、最近、ミスが多いようだね」
2.自分の意見や感情を伝える
「私としては、Aさんには来年の新入社員の指導役になってもらいたいと期待しているんだよ。
ただ先輩のAさんのミスが多いとなると、Aさんにとって後輩指導も
うまくいかないのではないかと心配だ」
3.相手の求めているものを解決策として提案する
「そこで、数字も文章についても、〜〜のように再チェック、ダブルチェックをすると
ミスを発見できるようになる。
また、自分がこれまでミスをした箇所を書き出すことで、
すぐにミスに気づくことができたり、意識して取り組むようになるのでミスも少なくなると思うよ」
4.提案への選択をうながす
「どうだろう。
Aさんが今できること、やってみたいことは、何かな?
ほかにもAさんが考えるミス防止策があったら、提案してみてくれないか。
全面的に応援するよ!!」
■事例4
「現場でヘルメットをかぶらない部下」1.客観的に事実を伝える
「いつもがんばってくれるね。ありがとう。助かっているよ。
ところで、Aさん、現場でヘルメットをかぶっていないようだね」
2.自分の意見や感情を伝える
「ヘルメットを使用する一番の理由は何だと思う?
Aさんがケガや事故に合わないためだ。
私としては、Aさんにケガをしてもらいたくないし、事故にも合ってもらいたくはない」
3.相手の求めているものを解決策として提案する
「そこで例えば、ヘルメットの形が自分に合っていないとか、
他のヘルメットならいいとかあったら、申し出てもらいたい。
Aさんの希望に沿うように考えるよ。
安全を踏まえた新しいヘルメットが導入できれば、職場も業務にもいい影響があるからね。
もしかして、他の理由があるなら教えてほしい」
4.提案への選択をうながす
「どうだろう。Aさんの意見、聞かせてもらえないだろうか。応援しているよ!!」
■事例5
「いつも遅刻をする部下」1.客観的に事実を伝える
「いつも作業がんばってるね、ありがとう。助かっているよ。
ところで、Aさん、最近、よく遅刻をしてくるよね。朝礼に間に合わない日もあるようだね」
2.自分の意見や感情を伝える
「そもそも時間厳守は、社会人として最低限のマナーだと思っている。
Aさんが遅刻をすることで、一日のスケジュールを全員で共有、確認できないなど、
チームへの影響も結構あるんだよ。
また、先輩であるAさんが遅刻をすることで、後輩への指導もうまくいかなくなる」
3.相手の求めているものを解決策として提案する
「そこで例えば、『5分前』を意識してみたらどうだろう。
仕事のある日の朝だけ、すべてを5分前に前倒して行う、という作戦だ。
5分前ならできるんじゃないかな。
5分前が定着すれば、自然と遅刻はなくなると思うよ。
遅刻する理由があれば教えてほしい。相談にのるよ。
また、Aさんが考える遅刻しない方法があれば言ってほしい。考えてみないか」
4.提案への選択をうながす
「どうだろう。Aさんの意見、聞かせてもらえないだろうか。応援しているよ!!」
■ DESC法実はこれらの方法は、アサーションの代表方法である
「DESC法」という自己主張スキルをアレンジしたものなのです。
「DESC」は以下の4つの単語の頭文字をとった言葉です。
1.D(Describe):描写する
2.E(Express):説明(表現)する
3.S(Specify):提案する
4.C(Choose):選択をうながす
私流にまとめると
1.客観的に事実を伝える。
起こった事実のみを冷静に客観的に伝えます。
最初にクッション言葉を添えるといいですね。
2.自分の意見や感情を伝える。
その事実についての自分自身の意見、考え、感情を淡々と伝えます。
3.解決策を提案する。
相手の気持ち、感情、立場を踏まえた上での、自分なりの解決策を提案します。
あるいは、特別な理由があるかもしれないので、それらを確認することも必要です。
4.最後に、相手に選択してもらいます。
さらに、相手の率直な意見を尋ねることも大事ですね。
■ おわりに上記の5つの事例、アサーションの時間、つまり話す時間はたった1分前後。
コンパクトにまとまっていますね。
相手が得意先なら、日ごろのご愛顧の感謝をこめて。
上司なら、日ごろの自分へのご指導やご鞭撻(強い励ましを込めて厳しく指導すること)
への感謝をこめて。
部下なら、日々がんばってくれていることへの労いや感謝をこめて。
つまり相手へのリスペクトをこめて、心から伝えるといいですね。
さて、今のあなたは、誰のどんな難題にどうアサーションしますか?
ちょいと、シミュレーションしてみてはいかがでしょう?
あの、会議で発言しないのに陰でコソコソ批判や悪口を言う部下に対しては・・・?